ばんたね病院は名古屋の都心部に位置する病院です。名古屋駅からは最寄りの尾頭橋駅まで2分の場所に位置し、金山駅からは徒歩15分程度の場所にあります。
虚血性心疾患、心不全、不整脈を中心に数多くの患者の診療にあたっています。急性冠症候群・虚血心疾患への冠動脈インターベンション(PCI)、頻脈性および徐脈性不整脈へのカテーテルアブレーション・ペースメーカー植込み、心不全へは薬物治療に加え、心臓リハビリテーションの導入を積極的におこなっています。
当院循環器内科の特徴は、それぞれの医師には専門がありますが、その専門の診療だけではなく、一般循環器医として勤務していることが挙げられます。心不全や虚血性心疾患の専門の医師がカテーテルアブレーションをおこなうことや、不整脈を専門にしている医師がPCIをおこなうことがあります。そしてお互いがその診療についての疑問を相談したり、カンファランスで話し合ったり、最新の論文の抄読会により研鑽を深め合っています。中規模が故に、一般循環器医として成長が望める環境となっています。
特に循環器志望のある後期研修医の先生にはPCI、アブレーションなど侵襲的な治療には積極的に関わってもらい、専門性に偏ることなく、ガイドラインを遵守し、患者さんの立場に立った包括的な治療ができる医師へ成長していただくことを目標としています。
もう一点は内科学講座の一部として成り立っているため、他の診療内科と垣根なく、密に連絡を取り合いながらきめ細やかな診療を提供できることが挙げられます。横のつながりが強いため、気心の知れた仲の良い同期や、相談のしやすい先輩がたくさんいます。アットホームな雰囲気で日常業務に携わることができ、初期はもちろんのこと、後期研修においても他科の先生と一緒に循環器以外の診療にあたることができます。循環器医として専門性を磨くともに一般内科医として成長するために、重要と考えていることからです。これにより内科専門医・総合内科専門医取得に向け、十分な症例数を経験することが可能となります。
名古屋市内で交通の便もよく、和気あいあいとした中で内科医・循環器医として成長できる病院です。
虚血性心疾患・
末梢動脈疾患班
当院は、日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)の研修関連施設であり、年間100例程度のPCIを行っております。また、2021年度からはロータブレーター(イメージとしては、高度石灰化をダイヤモンド性の「やすり」で削る治療です)施行施設となり、繊細な技術を必要とする治療も積極的に行っております。研修医の先生方には虚血性心疾患の診断と治療を習熟することをめざし、上級医の指導のもと主治医として病態把握と治療方針の選択について研修し、冠動脈造影(CAG)、左室造影、右心カテーテルを実施し、結果と病態に基づき治療方針を適切に決定できるようになることを目指しています。
また、緊急時に急性冠症候群(不安定狭心症、急性心筋梗塞)へのPCIに対応できるよう、日頃よりCAGはもちろんのこと、アシスタントとしてではなく、ファーストオペレーターとしてPCIが行えるように専門医の指導のもと、積極的に施行して頂き早期戦力として活躍できることを目標とします(図1)。同時に画像診断として心臓C Tによる冠動脈病変の読影、冠動脈内イメージング(血管内超音波:IVUS、光干渉断層法:OCT)、冠動脈機能検査(冠血流予備量比:FFR)の手技および解釈と理解を深めることが可能です。
そして閉塞性動脈硬化症、重症虚血肢(critical limb ischemia)、腎血管性高血圧症に対するカテーテル治療(EVT:endovascular treatment)を冠動脈インターベンションで培った技術を活かして施行できる術者としての研修が行えます。 PCIは手術自体も大事ですが、その後の薬物治療・生活指導もとても重要です。
そして、心臓リハビリテーションはPCIと同等以上の生命予後改善効果があることもわかっており、心不全グループやリハビリテーション部とも協力のものに、これらの知識の習得も可能です。特に近年では病院でも多職種で、地域も巻き込んで治療していくことの重要性が認識されています(図2)。
PCI治療を行った患者さんや慢性心不全患者さんの多くは慢性期にはかかりつけ医で治療を続けますので、我々の施設で学んでいただいた知識は、将来開業を考えて見える先生には大変有用な知見を得ることができると考えております。
藤田医科大学や名古屋大学、そしてそれらの大学の関連病院とも協力して、臨床研究・疫学研究も行っておりますので、やる気がある先生は学位論文となるような検討もやっていただけると思います。
COVID-19パンデミック禍の急性冠症候群発生状況については、全国に先駆けて論文発表しております。
超高齢社会の進展とともに、今後もますます急性心筋梗塞をはじめとした急性心筋梗塞が増えることが想定されておりますので、早期に治療の習得ができる当院は非常におすすめです。
不整脈班
頻脈性不整脈
2020年7月よりカテーテルアブレーションを開始しています。心房細動を中心に、発作性上室性頻拍、心房粗動、心房頻拍、心室期外収縮・心室頻拍といったすべての頻脈性不整脈を対象におこなっています。初年度に102例の症例をおこない、不整脈研修施設認定、冷凍アブレーション(クライオアブレーション)施設認定を受け、現在もその症例数は増加傾向です(図3)。不整脈学会認定専門医 2名が指導にあたり、後期研修より上室性頻拍・心房粗動へのアブレーション、ブロッケンブロー手技・心房細動への左房への治療をおこなっています。3DマッピングシステムはCARTO®(Johnson and Johnson)、Ensite®(Abbott)、Rhythmia® (Boston)の3つが使用可能であり、それぞれの特徴を生かし、症例によって選択しています(図4)。
症例の7割は心房細動であり、その半数は持続性心房細動です。アブレーションによる治療は確立されていますが、しかし持続性心房細動は複数回の施行でも5年間での洞調律維持は60~70%と十分とはいえません(Am Heart J 2011; 161: 188-96)。持続性心房細動の病態解明のため、維持するための基質評価が必要になってきます。未だその病態は確立されておらず、当院では3D mappingシステムの機能を使い、臨床研究をおこない、学術発表を積極的におこなっています(図7)。
また心房細動発症およびアブレーション後の再発要因には高血圧、糖尿病、飲酒、心不全、肥満、睡眠時無呼吸症候群(SAS; sleep apnea syndrome)があります。当院では内服加療に加え、心臓リハビリテーションの導入と、SASの評価を積極的におこなっています。
簡易ポリソムノグラフィー(PSG; polysomnography)にて評価を行い、疑いがあれば耳鼻咽喉科と協力のもと、full PSGによる評価と持続陽圧呼吸療法(CPAP; continuous positive air pressure)の導入をおこなっています。
徐脈性不整脈
洞不全症候群・完全房室ブロックに対してペースメーカー植込みをおこなっています。心室リードは出来る限り刺激伝導系を捕捉できるように心室ペーシングリードは右室中隔、可能であれば左脚エリアペーシングをおこなっています。
しかしペーシングリードおよびポケットに関連する合併症は5年で10%程度の報告があります(Heart rhythm 2012; 9: 728-35)。リードおよびポケット関連合併症が危惧される認知症、低栄養などの場合は、カンファランスで検討の上、リードレスペースメーカーの植込みもおこなっています(図6)。
心不全班
ガイドラインを遵守し、心臓リハビリテーションの導入を積極的におこなっています。心不全カンファランスにて看護師・理学療法士・栄養士・ソーシャルワーカーとともに患者の状態を心不全の病態、生活環境、運動耐容能、栄養状態を共有し、包括的な治療方針を決定します(図7)。
また心房細動同様に心不全症例にSAS、特に中枢性無呼吸が多いことを報告しています(K Sano, E Watanabe et al. Eur J Heart Fail. 2013;15: 1003-1010)(図8)。PSGによる評価および、CPAP導入を積極的におこなっています。