不整脈診療
当科 不整脈班においては経験豊富な専門医による診断のもと、患者さんに最も適した治療を提供できるようにチームで不整脈医療に取り組んでいます。薬物治療に加えて、カテーテルアブレーション、デバイス植込みなどの高度な治療法を幅広く行っています。カテーテルアブレーションにおいては、3次元マッピング装置の進歩によって、効率的かつ安全なアブレーション治療が行えるようになり、当院では EnSite、CARTO、RHYTHMIAなど全ての最新特殊機器を使用できる環境にあります。
また、(長期)持続性心房細動では心房細動の異常な興奮を可視化し、個々の患者さんの病気の原因を追究して治療に結びつける新しい装置(ExTRa Mapping)も導入し、より難しい治療の成績向上に役立てています(図1)。
また、通常の高周波アブレーションに加え、バルーンアブレーションも積極的に行っております。当院ではクライオバルーン(冷凍焼灼)、ホットバルーン(熱焼灼)、レーザーバルーン(レーザー焼灼)が使用できます(図2)。
ただし、肺静脈の形態よっては治療に適さない場合があり、当院では事前に心臓 CT を撮影して解剖を把握し適応を決めています。
(図2)バルーンアブレーションシステムデバイス治療では、通常のペースメーカ治療に加え、リードレスペースメーカ(図3)やヒス束ペーシング、植込み型除細動器(経静脈型と皮下植込型)、両心室ペースメーカ(心臓再同期療法)など患者さんの病態に合わせて幅広い先進デバイス治療を提供します。
また、失神・潜因性脳梗塞の原因精査目的の植え込み型心電計(ICM、ILR)移植も積極的に行っております。植え込み型心臓デバイスについては遠隔モニタリングによる早期介入を積極的に行っております。
診療実績
2020年は400件近くの治療を行わせていただきました。植え込み型デバイスは、2020年も年間150例程度の治療件数を維持しております(図4)。
2021年上半期(1-6月)においてカテーテルアブレーションは200件、植込み方デバイスは80件を超えております。
経皮的左心耳閉鎖術
WATCHMANデバイスによる経皮的左心耳閉鎖術はカテーテルを用いて、左心耳の入口に蓋をする治療です。脳梗塞のリスクと抗凝固療法による出血リスクの双方が高い非弁膜性心房細動患者さんが適応になります。本治療によって、大きな脳梗塞を予防しつつ、長期間の抗凝固療法による出血リスクを低下させることができます。
不整脈班でも心臓カテーテル班、心エコー班の協力のもと2020年10月から本治療開始し、適応患者さんには積極的に植込みを行っております(図5)。
合併症の予防
治療成績もさることながら、合併症の予防にも独自の取り組みを行っており、その頻度が極めて低いことが当院の不整脈治療の特徴です。例えば、当院での最近3年間(2017-2019年)の心タンポナーデの頻度は0.2%、脳梗塞は0%、死亡は0%でした。術中のカテーテル操作は勿論のこと、周術期の抗凝固療法にも細心の注意を払って合併症の予防に取り組んでいます。
また当院では、不測の事態に備えて緊急処置や手術の対応が可能なハイブリッド手術室で治療を行います。大学病院ならではの心臓外科や脳卒中科との連携も充実しており、患者さんに安心して治療をうけていただける体制を作っています。
心臓電気整理・
不整脈 専門研修電気生理学的検査・カテーテルアブレーション・デバイス植え込み/管理・経皮的左心耳閉鎖術などの非薬物治療を中心とした不整脈医療を、経験豊富な指導医のもと、高度な知識とスキルを安全に習得していただくよう研修・教育を行っております。また、不整脈疾患に関する研究も同時に行ってもらい積極的に国内外での学会発表や論文発表を行ってもらいます。現在、心腔内超音波を用いた左心房の壁厚評価とアブレーションへの応用(図6)、頻脈誘発性心筋症における心電図パラメータによる予後の予測、心房細動のロータマッピングと基質アブレーションによる治療成績の改善など様々な研究課題に取り組んでいます。
また、心房細動の病態に関するバイオマーカーの探索(2017-2019 科研費 基盤研究 C)や心臓血管外科の協力のもとヒトの心房組織を用いた心房細動の病態解明(2020-2022 科研費 基盤研究 C)といったトランスレーショナル研究も積極的に行っております。2021年3月の「不整脈非薬物治療ガイドライン:フォーカスアップデート版」では、我々が行っている心房細動アブレーション周術期の抗凝固療法の取り組みと研究成果が(ダビガトランスイッチ/ブリッジ)が、論文の引用とともに本文に記載されました(図6)。当科 不整脈班においては高度な治療スキルとリサーチマインドを兼ね備えた不整脈専門医の育成を目指しています。
研修スケジュール
我々、藤田医科大学 循環器内科 不整脈班では個々の患者さんに対して
丁寧な診療を行うことをモットーに、そこから得られた貴重なデータを無駄にすることなく、
より良い不整脈診療、研究、教育に向けて日々一丸となって研鑽を積んでおります。