理念・目標
藤田学園創設者 藤田啓介先生の言葉の一節である、「片時も自己に驕(おご)ることなく医を行わん」を不断の研鑽の理念としています。患者中心の、安全で質の高い医療を提供することによって、社会に貢献するとともに人間性豊かな医療人を育成することを目指して、
- 1.日本の循環器診療の最終拠点となること
- 2.最後まであきらめない臨床と研究を行うこと
- 3.ガイドラインに採用される診療と研究を行うために日々研鑽を積むこと
- 4.高い志を持つ人材を育成すること
を目的にしています。
沿革
昭和48年4月の開学にあたり、名古屋大学第一内科から循環器内科を専門とする水野康先生が内科学講座IIIの教授として赴任されました。その後、内科学講座IIIは循環器、血液、内分泌、および神経の4内科に分離しました。昭和63年に菱田仁士先生が、また、平成2年には渡邉佳彦先生が、それぞれ循環器内科教授に昇任されました。平成10年7月より渡邉教授は坂文種報徳會病院(第2教育病院)専任となり、以後、第2教育病院循環器内科は、平成15年4月から野村雅則教授が第2代教授、平成23年4月からは井澤英夫教授が第3代教授、令和2年4月から渡邉英一教授が第4代教授に就任され、地域に根差した循環器医療を提供しています。一方、大学病院(第1教育病院)循環器内科は、第2代教授の菱田仁士教授に次いで、平成19年4月から尾崎行男教授が第3代教授に、令和2年4月から井澤英夫教授が第3代教授に就任してみえ、全国有数の症例数と重症疾患に対応できる循環器病センターとして発展しています。また、令和2年4月から岡崎医療センター(第4教育病院)が開院し、尾崎行男教授が副院長として病院をリードすると共に、大田将也准教授の下、循環器チーム一丸となって救急疾患を中心に診療にあたっています。
令和5年現在、同門の数は250名を越え、関連病院や地域医療において活躍しています。
研究
全入院症例のデータベースを構築し、これを利用した臨床研究を主な柱としています。医局員だけでなく、国内および海外からの臨床研究員(fellow)や、循環器内科研究員として登録された臨床検査技師らも熱心に研究に取り組んでいます。循環器疾患の各分野の専門家を有し、それぞれが当地方における指導的役割を果たしています。主な研究テーマは下記8領域にわたります。
冠疾患
血管内イメージング (IVUS, OCT, 内視鏡など) の画像解析とPCI治療の最適化や合併症の予測、将来的な心筋梗塞の予防に関する研究が中心です。PCI後の新たな抗血栓療法 (aspirin-free strategy) についても主導施設として多施設共同研究による安全性の検証を行っています。また生体吸収性冠動脈ステント (BRS) の治験施設として、ヒト冠動脈に対して初めて植え込みを行った実績があり、新しい検査法・治療技術の導入や普及に努めています。
不整脈
心房不整脈ならびに心室不整脈の発生・維持機構や心臓リモデリングの病態機序の解明、また臨床評価のため新規バイオマーカーの探索や治療法の開発を主な研究テーマとしています。植込みデバイス患者における致死性不整脈の発症や突然死の予測法、および治療法の開発にも力を入れています。全国規模の学会主導登録研究や他大学との多施設共同研究にも積極的に参加しています。
心不全
心不全患者のデータベースを構築し、心不全治療のエビデンス確立やITを応用した心不全早期診断の開発を行っています。また、心不全における血清miRNAなどの新しいバイオマーカーの探索などの研究を行っています。劇症型心筋炎や広範な急性心筋梗塞などにより高度に心機能が障害され、V-A ECMOや循環補助用ポンプカテーテルなどを用いた機械的循環補助による治療が必要になった場合の循環管理方法の研究を進め、多施設での研究を開始する準備を進めています。心不全急性期の栄養療法が予後に与える影響について研究を行い、急性期治療成績の改善のみならず健康寿命の延伸を目指しています。
心臓超音波
心臓超音波検査で得られる心臓の形態・機能評価と様々な心疾患患者の予後との関連を調査しています。speckle tracking imaging法やvector flow mapping法といった心臓超音波検査の新手法を用いた心機能の解析、臨床的な有用性の検討も行っています。その他、心エコー図学会等が主導する多施設共同研究にも参加しています。心臓超音波検査によって潜在的な心機能異常や心疾患の早期発見を行い、早期の精査加療につなげることによって患者の予後を改善することを目指しています。
画像診断
CTを用いた研究では薬物治療や心臓リハビリテーションが冠動脈プラークに及ぼす効果や、また産学協同で機械学習を用いることで造影剤・被ばく量の減量や、特に石灰化病変やステント内など評価困難な部位の画質改善に取り組んでいます。MRIやPETを用いた研究としては心アミロイドーシスやサルコイドーシスといった二次性心筋症の研究を行っています。SPECTではBMIPPを用いた定量的な心筋脂肪酸代謝の評価方法を検討しています。
心リハ
DPCなどのビッグデータを活用した心リハの有用性に関する研究やITを活用した遠隔心リハプログラムの開発などの研究を行っています。
肺循環
他科と幅広く院内連携を取りながら、肺動脈性肺高血圧症 (PAH) に対する薬物療法、及び慢性血栓塞栓性肺高血圧症 (CTEPH) に対するバルーン肺動脈形成術 (BPA) などに関する全国規模のレジストリ研究に参加しています。また、依然予後不良なカテゴリーである肺疾患に合併する肺高血圧症に関する研究を行っています。
バイオマーカー
血液や尿は、比較的、低侵襲で採取できます。血液・尿などの検体を用いて様々なバイオマーカーを測定し、循環器疾患の病態解明やリスク評価に関する臨床研究を行なっています。積極的に他の研究班とコラボレーションしながら研究を進めています。
研究成果は、国際学会、国内学会で発表するとともに、英文論文として出版しています。欧米への留学も盛んであり、また、アジア各国からも留学生を受け入れています。
主な国際学会 |
・アメリカ心臓協会 (AHA) ・アメリカ心臓病学会 (ACC) ・ヨーロッパ心臓病学会 (ESC) ・ヨーロッパ不整脈学会 (Heart Rhythm) ・ヨーロッパインターベンション学会 (EuroPCR) ・ヨーロッパ心不全学会 (Heart Failure) ・ヨーロッパ心リハ学会 (EuroPrevent) |
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主な国内学会 |
・日本内科学会
・日本循環器学会
・日本心臓病学会
・日本心血管インターベンション治療学会
・日本不整脈心電学会
・日本心不全学会
・日本心エコー図学会
・日本心臓リハビリテーション学会
・日本高血圧学会
・日本心臓核医学会
・日本超音波学会
・日本移植学会
・日本人工臓器学会
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診療
外来診療
月曜から土曜まで毎日2〜3診で行っています。一日平均約120例の外来患者を診察しています。専門外来としてペースメーカ・ICD外来、成人先天性心疾患外来、補助人工心臓外来、足外来などがあります。
入院診療
病床数は一般病棟に60床、CCU10床ですが、冬季には一日入院患者数は100例を超えることもあります。当科は全国屈指の症例数を誇る循環器病センターであり、急性心筋梗塞や不安定狭心症は年間約300例、急性心不全は年間約400例、冠動脈インターベンションは年間約500例、不整脈に対するアブレーションは年間約400例、経カテーテル的大動脈弁留置術 (TAVI) は年間約70例、補助循環用ポンプカテーテル (IMPELLA) は年間約30例の実績があります。また、心臓血管外科とは毎週カンファレンスをして、外科手術を含めて患者さんに最適な治療を提案するようにしています。心臓リハビリテーションにも力を入れていて、退院後に自宅で入院前と同じ生活が送れることを目指して、理学療法士や管理栄養士、薬剤師、看護師などと共に多職種チームで再発予防に向けた教育や療養環境の整備を心がけています。地域医療機関の先生方やスタッフの方とも緊密なコミュニケーションを取り、大学病院として有する最高の医療を大学病院近隣の患者さんへも提供する体制を整えています。豊明市や名古屋市、大府市などの近隣だけではなく、知多半島や豊田市、岡崎市など遠隔地からも数多くの患者さんが紹介状を持って受診されています。
将来の方向性
本学の卒業生だけでなく他大学の卒業生や、さらに世界中から優秀な頭脳を集め、世界へ向けて情報を発信していくことが大切だと考えています。そのためにも、質の高い教育、研究、医療を提供する講座として歩んでまいります。